「礼」 〜間合い〜

「傘を持ってるんだから翳(さ)せよ。」
「うん、たいした雨じゃないから。」


歩いている途中で雨が降り出してきました。


一人は傘を持っていましたが、翳(さ)そうとはしません。
傘を翳さずに、一緒に濡れて歩く。


何度傘を翳すように言っても
「大丈夫。」と言って翳そうとはしませんでした。


二人だけだったなら、傘を翳して一緒に歩いたかも知れませんが、
一本の傘で全員を覆うことが出来ない。
自分だけ傘を翳して、友達が濡れて歩く・・・。
だから、


自分もみんなと同じように濡れて歩いたのでしょう。
同じところに身を置くことを選んだのでしょう。


この感覚、自分に置き換えて相手を思いやるこころが
「礼」の基本だと思います。



これが、職場の先輩・後輩という間柄だったなら、どうでしょう。
中には、ただ先輩というだけで後輩に対して威張り散らし、
後輩の礼がなっていない、と怒る人がいます。
しかし大切なのは、先輩に先輩としての価値があるかどうかではないでしょうか。
先輩に先輩としての価値が生まれたなら、
自然とその価値に値する礼儀を後輩から受けるようになるものです。


後輩というものは、やはり目上の(階級・地位や年齢が自分より上である)人には、
礼を尽くさなければなりません。
礼儀とは、尊敬の念がかたちと成って現れたものでなければいけません。
例えば・・・ですが、この傘の話のような感覚を持つこと、
進んで事を行うこと、進んで代わりを申し出るような姿勢も、その一つです。
何の躊躇もなく楽をしたり、自分の立場を理解できないのは残念なことです。


目上の人に接するときの呼吸(間合い)、お客さまと、友達と、初めての人と、・・・
それぞれ親しさによって間合いは違います。
この、人と接するときの間合い(間、距離、隔たり)をわきまえ、守ることが
礼儀として大切なことの一つです。


礼儀正しい人と思われるのと、礼儀知らずの不作法な人、と思われるのでは
相手の心の開き方が違うものです